母はある時、夜空の星の軌跡を映した写真を見て、それを藍色の絣で表現しようと思ったらしいのです。我が家では星空の絣と呼んでいます。ネーミングの良さもありますが、柄が何とも言えず、夜空のイメージが広がって、私もこのシリーズの絣布は大好きです。
ブックカバーに仕立てて、インターネットで販売したところとても好評で、出品するとすぐ売り切れてしまいます。たくさん作れたらよかったのですが、他の藍染め布の在庫はあったので、今ある分だけ、と、新たにこの絣を織ることはしていませんでした。
春からの母への織物のご注文がちょっと一段落したところで、母と次に何を織ろうかと話していて、できれば星空の絣を織りたいという話になりました。以前織った時の糸がまだ少し残っていることに加えて、滋賀県の紺喜染織さんと知り合えたことで、新たに糸を染めていただけるという見通しができたことが背中を押してくれました。
実は、絣の部分はインド藍で母が染めたものなのですが、他の色の濃い部分は紺屋さんで染めていただいた本藍染めだったので、以前に染めていただいていた藍染め屋さんが代替わりで規模を縮小されたことや、母が引っ越しをして遠くなってしまったことが重なって、新たに藍染めに出すことが難しくなっていたのです。
今回も、絣の部分は自宅で染めてみようということで、先日経糸を整径し、私も一握り分だけ絣にする糸を持ち帰って星をイメージしながら糸の束を縛ることに。自宅にある星の本と、加えて図書館でもきれいな写真が載っている星空の本を借りてきて眺めながら、星空のイメージをためていきます。そのままをリアルに写すわけではないので、実際の作業はかなりおおらかに、ランダムに糸を縛っていきます。写真を見ても見なくてもそんなに変わらないのかもしれないのですが、気持ちの問題でしょうか。イメージを形にするということは、気持ちとか、自分の中にある映像とか、体に満ちている感覚とか、説明しにくいものも大切な気がしています。