身のまわりを見渡すと、色とりどりの布が目に入ります。
シルクもウールもコットンも、もともと繊維の状態では白いものが多いです。自然の状態で色がついているものもありますが、多くは白い糸や布を染めていろいろな色にしたものが使われています。色を染めるためには染料を使うわけですが、植物など天然のものを利用して染める方法を草木染めと呼んでいます。
ウィキペディアによると
『作家の山崎斌が1930年12月に資生堂ギャラリー(銀座)で行った「草木染信濃地織復興展覧会」が創始とされる。それまで植物を使用した染色に対して特定の呼称がなかったため、展覧会に際して新たに考えるよう周囲に薦められたという。同時に山崎は登録商標を申請し、1932年に受理された。すでに商標の期限は切れているが、後継者である息子の山崎青樹(せいじゅ)は追加申請を行っていない。これは「草木染を愛する人に自由に使用してもらいたい」という願いによるものである。 その後、斌の孫であり青樹の息子である山崎和樹(かずき)へと引き継がれ、三代による「草木染」の啓蒙活動が続いている。』
ウイキペディア
ということで、今では植物や一部、昆虫などの天然のものを使って染める方法は、広く【草木染め(くさきぞめ)】と呼ばれて親しまれています。
天然染料に対して、化学染料を用いて染色する方法もあり、沢山、均一な色に染めたい場合などは化学染料の方が便利です。
一方で草木染めは、植物によって出て来る色が違い、また、同じ植物でも採取する季節によって、採取する場所によっても染まる色が違うという、狙って染めたとしても必ずしもその色にならない難しさと面白さがあります。
どちらが良いということではなく、その目的に合わせて使い分けるのが良いと思っています。
ハンサムなマフラーの店では、マフラーは主に草木染めの糸を使って織っています。
まずは、糸の状態で染めて、その糸を縦横に組み合わせて布にするわけですが、染める工程だけでも一色に丸一日かかるので、色の数が多いほど時間や手間がかかっているということになります。
自然界にあるものを使って染めるので、そんなに強烈な色合いにはなりません。鮮やかな色もあるのですが、どこか自然なやさしさを感じる色合いになっています。
染めに使う材料は、染料店でも売っていますが、身近なものを使うことも多いです。玉ねぎの皮はきれいな黄色に、紅茶の葉はミルクティーのような優しいベージュに。庭では、セイタカアワダチソウなどの雑草や、植木を選定した時の枝、時には散歩の途中で農家の方等に果樹の剪定木をいただくことも。植物によって、また季節によって、採取した土地によって、その時その時の色が染まるという楽しさがあるのが草木染めです。同じものをたくさん作るということはしていないので、ち密にデザインして色を染めるというよりは、その時々、染まった色を生かして、組み合わせを考えてデザインし、織っています。
母は、台所で染めるからと強い薬品は使わないようにしていました。今でも、野菜を煮るのと同じように木の葉や枝を煮て、染物をしています。自然からいただく色の美しさや、それを得る工程の楽しさもさることながら、作る人にも、もちろん使う人にも優しいのが草木染めの良いところだと思っています。